東アジア文化都市2019豊島マンガ・アニメ部門スペシャル事業

マンガ・アニメ3.0

【IMARTレポート】
[特別講演]ジャンプの世界戦略:
MANGA Plus海外配信の狙い伊東敦+籾山悠太

『SPY×FAMILY』の衝撃

 「MANGA Plus」の最大の特徴は海外の企業を通さずに、ジャンプ編集部が自ら運営している点にある。これによって国ごとの反応を連載中に把握できるようになり、各国のライセンス展開にスピード感をもって対応することが可能になった。
 特にジャンプ編集部が驚いたのは、2019年に連載を開始した遠藤達哉の『SPY×FAMILY』が、単行本化前から海外で人気を博したことだったという。これまでのジャンプ作品はアニメ化をきっかけに海外で話題になるケースがほとんどであり、今年も、世界中でアニメ配信が好調な『鬼滅の刃』のコミックは、アニメ配信開始以降海外でもヒットした。しかし『SPY×FAMILY』は第1話の連載開始から、アニメ化を待たずに海外ファンに評価されるという前代未聞のケースとなった。籾山氏は『SPY×FAMILY』が配信アプリ『少年ジャンプ+』の連載タイトルだったため、「紙媒体とは異なり海賊版が先に流出する心配がなかった」ことも要因だと語った。

 

 集英社が「MANGA Plus」の運営に取り組んだ理由として、韓国や中国のマンガプラットフォームが世界を席巻しているという事実が挙げられる。特に韓国のマンガアプリ「Naver Webtoon」はGoogle PlayのComicカテゴリで100以上の国と地域で収益トップを記録し、月間利用者数は6000万人という膨大な数字を叩き出している。
 また中国では自国オリジナルタイトルの台頭が目覚ましく、籾山氏は「最近は中国の海賊版サイトを調べていても、日本のマンガが見つからない」という実感を語る。それは日本が海賊版対策に積極的に取り組んできたことの証でもあるが、日本のマンガ自体が海外勢に押されているのではないかと懸念を告白。そういった危機感から「新しい企画にチャレンジしたほうがいいのではないか」という考えが自然と生まれたという。
 最後に籾山氏は「MANGA Plus」の今後について、「僕たちの世代は月曜日になると、学校の教室で今週の『DRAGON BALL』はどんな展開だったかという話題で盛り上がっていた」と子ども時代を振り返り、「今度はインターネット上で世界中の人たちがそういった話題をするようになる。そんな流れを作ることを目標にしています」と意気込みを見せた。

 

文:高橋克則

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