東アジア文化都市2019豊島マンガ・アニメ部門スペシャル事業

マンガ・アニメ3.0

【IMARTレポート】
[基調講演]
今後日本は世界に通用するコンテンツを創出し続けられるのか?
~30年の海外経験を基にして考察する~塚本進

 「東アジア文化都市2019豊島」マンガ・アニメ部門スペシャル事業のクロージング企画、マンガ・アニメの未来を作るフェスティバル「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima(IMART)」が、2019年11月15日(金)~17日(日)にかけて、豊島区役所本庁舎にて開催された。
 IMART2日目となる16日(土)11時からは、前日の締めくくりに続き2本目の基調講演が行われた。登壇者は株式会社KADOKAWA 顧問 海外担当/株式会社ジャパンマンガアライアンス顧問の塚本進氏。途中、広州天聞KADOKAWA動漫の劉烜偉董事長も交え、海外で長らくビジネスに携わった体験をもとに、グローバルな視野から日本のマンガ・アニメの未来が語られた。その模様をレポートする。

(編集部)

海外の情報はインサイダーにならないとわからない

 IMART2日目の基調講演は、KADOKAWA顧問の塚本進氏が登壇し、台湾や香港など幅広い国と地域でビジネスに携わった経験を振り返りながら、日本のビジネスの将来像について語った。

 

 塚本氏は前職のトーハン時代から、約30年にわたって海外に駐在してビジネスに携わってきた経験を持つ。その中で気付いたのは「インサイダーにならないと情報は何もわからない」という事実だったという。本当の情報は日本から出張しただけでは得られず、「現地の出版社や書店、クリエイター、社員と実際に仕事をする中で、本当の現地の情報は得られるものだ」と自らの経験を述べた。塚本氏が海外拠点を次々に設立していったのも、そういった考えに基づいてのことだ。

 

 1999年には最初の海外拠点となる台湾角川を設立。2010年には中国に広州天聞角川動漫を設立し2年で黒字化を達成したが、日中関係の緊張によってコンテンツが規制されてしまい、事業計画は大幅な変更を迫られた。そのため日系企業を守れるのは巨大なIT企業しかないだろうと考え、テンセントと資本を組み換えて現在に至っている。
 その中でも契機になったのは、2017年に発表したゲームアプリ『陰陽師』である。シナリオ・脚本・音楽・声優に日本のクリエイターを相当数起用しながらメイド・イン・チャイナのゲームを作るという試みは大成功を博し、中国のゲーム会社が日本のクリエイターに発注するという流れを生み出した。そうした状況から、今度はIP(Intellectual Property)を専門に取り扱う角川青羽上海を設立。IPを基軸としてアニメやゲーム、MD(マーチャンダイジング)などを海外展開してマネタイズする方針を打ち出した。

 

 KADOKAWAは海外でビジネスを手がける際に、基本的には合弁会社を設立している。それは「現地のマーケットは現地の人間が一番よくわかる」ためであり、同じ価値観を持った企業をパートナーに選ぶことが重要になってくる。塚本氏は「お互いに組むことによってシナジーが生まれるかどうかが決め手になる」と、現地との密なコミュニケーションの重要性を説いた。

 

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