東アジア文化都市2019豊島マンガ・アニメ部門スペシャル事業

マンガ・アニメ3.0

【IMARTレポート】
[基調講演]
今後日本は世界に通用するコンテンツを創出し続けられるのか?
~30年の海外経験を基にして考察する~塚本進

中国オリジナルコンテンツの台頭

 続いて広州天聞KADOKAWA動漫の劉烜偉董事長が登壇。中国コンテンツ市場の現在について報告した。劉氏は2010年までの中国ではアニメ、マンガ、ライトノベルのオリジナルコンテンツが少なく、日本の作品を楽しんでいるファンがほとんどだったと語る。しかし2012年から2014年までの3年間で大きな変化が起こったという。
 中国政府が日本コンテンツを規制し、中国の大手IT企業がアニメやマンガへの投資を増やしたことで、モバイルを中心に作品が増加したのだ。それによって1990年代以降に生まれた中国人は、日本ではなく、主に自国のコンテンツに触れるようになった。マンガの場合も日本のような見開きの作品を読む層は少なく、モバイル向けの縦スクロールコミックに慣れ親しんでいるそうだ。

 

 劉氏は中国のコンテンツが台頭した現在でも日本の優位性は存在しており、それはストーリーを生み出す力にあると断言する。コンテンツのユニークさが魅力だというのだ。
 しかし今の中国では日本のコンテンツをそのまま翻訳して輸出するだけでは、規制の観点からも難しいのが実情である。そのため中国マーケットに向けて作品をどう調整していくのかが、現地企業の役割になってくるだろうとコメントした。

 再登壇した塚本氏は、近年話題になった中国オリジナルコンテンツとして、興行収入50億人民元(約780億円)を突破した『哪吒之魔童降世』と、そのクオリティの高さで日本のアニメファンの間で話題となった『羅小黒戦記』を紹介。さらに中国ではネット発のコンテンツの海外展開も進んでいることを明かした。
 その中で日本のコンテンツはどのように生き延びていくのか。塚本氏は中国ではマネタイズやマーケティングのスキルアップは早いが、劉氏がコメントしていたように、ゼロからイチを作り出すアイデア力については日本に一日の長があり、「その優位性をどうやって維持していくのかが今後のテーマになるだろう」と自説を述べた。アイデアを想像するクリエイターを輩出するための人材育成や、クリエイターに利益を還元できるシステムの構築、コンテンツを世界に広めていくことができるプロデューサーの必要性など、様々な課題が浮かび上がってくる講演となった。

 

文:高橋克則

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