東アジア文化都市2019豊島マンガ・アニメ部門スペシャル事業

マンガ・アニメ3.0

IMART2019年11月16日(土)
全セッションレポート(前編)IMART(第2日目・前編)

マンガ・アニメの何を残すのか、
なぜ残すのか

登壇者
岡本正史(株式会社集英社 デジタル事業部)
山川道子(プロダクションI.G アーカイブグループ グループリーダー)
ヤマダトモコ(マンガ研究者、明治大学 米沢嘉博記念図書館 展示担当スタッフ)
司会
数土直志

レポートセッション概要

左から、数土直志氏、ヤマダトモコ氏、山川道子氏、岡本正史氏

 

 セッション「マンガ・アニメの何を残すのか、なぜ残すのか」では、アニメ制作会社、マンガ出版社、美術館学芸員を迎えて、マンガ・アニメのアーカイビングの問題点と課題を語りあった。

 「何を残すのか、なぜ残すのか」という問いに対し、山下氏は、アニメが生産されなくなった未来に、日本にアニメがあったことを伝えるために残したいと、アーカイブに対する思いを述べる。そのうえで、図書館、博物館、美術館であれば学芸員や司書がいて、分類法や研究がある、しかしマンガ・アニメでは研究者が育つ土壌すら整備できていないと、問題提起した。岡本氏は、マンガの描き方や作家研究はあっても、マンガがどうやって作られてきたのかをめぐる、製作寄りの情報がほぼ表に出ていないことを指摘。活字、フィルム、デジタルと、時代ごとの製作方法の変化を具体的に示しながら、消えゆくもののアーカイビングの必要性を語った。ヤマダ氏は「全部を残す、なぜなら大事だから」という率直な気持ちを語ったうえで、マンガ・アニメは作家・作品の価値が定まってから収蔵を目指すのでは手遅れになってしまうと訴え、みなが賛同を示した。

 

 司会の数土氏から「行政に期待することは?」という問いが投げかけられると、補助金よりも、アーカイブのための法整備が必要と回答が一致。アーカイビングの意義と課題が、多面的に確認できるセッションとなった。


マンガアプリ大座談会 Vol.3 
新人獲得とアプリ 

登壇者
小室稔樹(LINE Digital Frontier株式会社 LINEマンガ インディーズ担当)
鈴木綾一(株式会社講談社 ヤングマガジン編集部副編集長 兼 投稿サイト事業チーム長)
福西祐樹(コミックスマート株式会社 取締役)
司会
菊池健

レポートセッション概要

 

左から、小室稔樹氏、鈴木綾一氏、福西祐樹氏、菊池健氏

 

 マンガアプリの普及によって、媒体の新人獲得の流れは大きく変化している。セッション「マンガアプリ大座談会 Vol.3 新人獲得とアプリ」では、ユニークな取り組みを行う3社がそれぞれの手法を紹介した。

 「LINEマンガ インディーズ」は、スカウトした投稿者が16週間のトライアル連載に挑戦できる試みを導入。トライアル中も原稿料が発生し、連載終了後に作品権利を返却するなど、作者にメリットのある仕組みを取り入れることで、多くの才能に光が当たるようにしたという。マンガ投稿サイト「DAYS NEO」はクリエイターが自分の望む編集者と出会えるマッチング機能を搭載。編集者の情報を知ったうえで、クリエイター側から担当者を指名できるなど、クリエイターファーストの精神で運営していると信条を語った。「RouteM」はマンガ家の支援プログラムに取り組んでおり、作家支援金として月に決まった金額を支払うなど、創作活動に専念できる環境へのこだわりを見せた。

 質疑応答では「年を取ったらマンガ家になるのを諦めるべきか?」という質問が。3社の担当者はいずれも否定し、マンガアプリは編集部への持ち込みとは異なり作者の年齢がわからないため、編集者に先入観が生まれないことや、デビュー時期の高齢化が進んでおり経験を活かした作品も増えていることなどが伝えられた。

 

【第2日目レポート後編へつづく】

 

【第1日目レポート 前編後編

 

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