IMART2019年11月17日(日)
全セッションレポート(前編)IMART(第3日目・前編)
エンターテイメントの“外”にあるもの
中国アート市場におけるアニメーション作家の存在感と、CGアニメーションの可能性
- 登壇者
- Gerben Schermer(キュレーター:アニメーション&コンテンポラリー・アート)
小川絵美子(プリ・アルスエレクトロニカ ヘッド) - 司会
- 土居伸彰
レポート(セッション概要)
アニメーションというと一般的に、映画やテレビといった受動的なメディアがよく知られている。しかし近年、現代アートの分野では、アニメーションを活用したインタラクティブな芸術が存在感を増している。セッション「エンターテイメントの“外”にあるもの 中国アート市場におけるアニメーション作家の存在感と、CGアニメーションの可能性」では、エンタテインメントの外側で活性化する別様なアニメーションについて、識者が知見を共有し合った。
まず小川氏から、メディアアートの祭典「アルスエレクトロニカ」についてのプレゼンテーションが。同祭典のコンピュータ・アニメーション部門は、アニメーションの概念を拡張するような多様なラインアップが特色だと述べる。そこでは、鑑賞者へ積極的に介入していく芸術として、アニメーションの捉え直しが企図されているという。
Schermer氏からは、中国の美術市場で存在感を増すアニメーション作家たちについてのレポートが。絵画や彫刻と合わせてアニメーションを展示する近年の試みが紹介された。
質疑応答では、大衆と芸術の距離をめぐる質問も。小川氏は、芸術と社会を架橋する重要性を強調。ワークショップなど、大衆が芸術と接点を持つための機会を積極的に用意する必要性を説き、Schermer氏もそれに同意を示した。
新たなマンガ家の姿 vol.2
今ネットで人気の漫画家が最も大切にすること
- 登壇者
- カメントツ(マンガ家、京都精華大学特別就任講師)
横山了一(マンガ家)
若林稔弥(マンガ家) - 司会
- 菊池健
レポート(セッション概要)
左から、横山了一氏、若林稔弥氏、カメントツ氏、菊池健氏
セッション「新たなマンガ家の姿 vol.2 今ネットで人気の漫画家が最も大切にすること」では、ネットを活用しているマンガ家たちの姿に迫った。
カメントツ氏はネットの普及による大きな変化は、マンガ家同士が敵ではなくなったことだと語る。マンガのデジタル化以前は雑誌の掲載本数が限られていたため、自分以外の作家はすべてライバルだった。しかし今は、協力関係を結ぶことも合理的な選択だという。さらにブログやSNSで作品を無料公開することが、企業タイアップに繋がったり、アクセスが増えて広告収入を得られたり、書籍が出版されたりと、新たなビジネスに繋がる状況も生まれていると語る。
若林氏はネットで発表したマンガは、読者だけでなく編集者や出版社の目も意識しており、ポートフォリオとしての役割も担っているとコメント。横山氏はネットでは共感を得られる作品が広まりやすい傾向にあり、雑誌の場合は難解な作品でも根気強く読んでくれる読者がいると、メディアによる傾向の違いを分析した。
ネットのデメリットとして、読者の反応がダイレクトに伝わるため、批判になれていないマンガ家はショックを受けてしまうというケースへも言及が。ネットの第一線で活躍するマンガ家たちの戦略を垣間見ることができるセッションとなった。
【第3日目レポート後編へつづく】