東アジア文化都市2019豊島マンガ・アニメ部門スペシャル事業

マンガ・アニメ3.0

「“マンガのマンガ”ができるまで松田奈緒子×山内菜緒子
『重版出来!』スペシャルトーク」レポート松田奈緒子+山内菜緒子

黒沢のモデルは実在する?


――ほかにも取材に関するエピソードはありますか?


山内(菜) 黒沢は今まで松田さんが描いてこなかったいわゆる体育会系のキャラクターですよね。それでたまたま私のお世話になっている方に、元柔道のオリンピックの強化選手がいて、マンガもすごく好きだったんですよ。だから「その子と会ってみませんか?」と、一度一緒にご飯を食べました。そうしたら現在の黒沢へと、キャラが一変したんです。


松田 すごくかわいい人で、私が会ったことのないタイプでした。オリンピックに出ようと子どものときから柔道をやってきた方って、みなさん会ったことありますか? ないですよね。本当にパワフルで一直線で、「すごい、マンガみたいだ!」と思いました(笑)。彼女に会わなかったら、現在の黒沢にはなっていなかったでしょうね。すごくラッキーでした。


――運命的なめぐり合わせがあったんですね。『重版出来!』を読んでいると、現場の人への取材を通じて生み出されたキャラクターすべてに愛情を注いで描かれていることがすごく伝わってきます。


松田 みなさんすごく真摯にお仕事をされていますからね。その部分をきちんと尊敬と感謝の気持ちを込めて描きたいなと思いました。


――第1話のネームにもその気持ちが溢れているなと。


松田 1話目の扉で山内さんに言われて「そうか」と納得したことがあるんですよ。(資料を見せながら)これが最初に私が描いたネームです。そうしたら、「主人公がはじめて見開きで出てくるのに、読者さんにお尻を向けているなんて何ごとだ」と怒られました(笑)。


山内(菜) そこは激しくコメントしましたね(笑)。


松田 そこではじめて「メジャー誌ってそういうものなんだ」と(笑)。それで新しく描き直して、今の形に決まったんです。このマンガを読む読者に対して、きちんと顔を見せることができるのが主人公なんだなと。私はもともと背中を描くのが好きなので、そう描いてしまいがちなのですが、主役はそうではないんだと勉強になりました。

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