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マンガ・アニメ3.0

「30年目の“サルまん3.0”!? 相原コージ×竹熊健太郎×江上英樹
『サルでも描けるまんが教室』スペシャルトーク」レポート相原コージ+竹熊健太郎+江上英樹

打ち切りを越えて


江上 「とんち番長」の最後も好きなんですよ。作品が完結したと思ったら、編集部が勝手に「次号からもっと面白くなるらしいでやんすよ!!」ってフキダシを付け加える。


竹熊 でもこれはね、ある実話が元になってるんですよ。本宮ひろ志先生の『男一匹ガキ大将』。作品はすごい人気だったんだけど、本宮先生はあまりにも描くのが辛かったから、主人公が殺されて完結という展開にした。そしたら編集部が勝手に「完」を消して「つづく」にしちゃったという。


相原 その割と有名な話を元ネタにしてる。


江上 「とんち番長」最終回ネタの次が「継続と打ち切り(正気の保ち方)」(笑)。


竹熊 「とんち番長」の連載を続けなきゃいけなくなった二人が、発狂して、わけのわからない電波マンガを描き始めるという展開ね。
 この時の相原くんは本当に狂気的な絵を描いていて、それを見た精神科医で評論家の斎藤環さんが「これは本物だ」ってすごく褒めてくれた(笑)。正気の人間が、狂気のふりをして描いた絵は見ればわかる、でも相原くんの絵はどこからどう見ても狂気の絵だって。


江上 これって相原さんはどうやって描いたの?


相原 狂人になったつもりで……。


竹熊 これが描けてしまう相原コージの才能はすごいなと。


相原 確かに描いてるときは、そっちの世界に半歩踏み込んだなって感覚はあったんですよ。


江上 (笑)。これは追い込まれてる時期?


竹熊 追い込まれてますよ。だってさ、当時の『スピリッツ』の締め切りは水曜の朝だったんだけど、『サルまん』の終盤は、原稿を入れるのが日曜の夜というか月曜の朝。相当遅れてたんですよ。


江上 それで来るのが「打ち切り」ネタ。


竹熊 最後の最後までネタにし切ったね。人気連載が急に打ち切りになったときにどうやって収拾をつけるのかっていう。どうかしてるよね、マンガのありとあらゆるものをネタにして描き切った。


江上 罪なマンガですよね。


相原 これ以降、マンガを描きにくくなった人もいるだろうなと思いますよ。全部のパターンをネタにしちゃってるんで、描くと必ずどれかには当てはまっちゃうから(笑)。

 

司会:山内康裕

 

 

相原コージ(あいはら・こーじ)
1963年、北海道生まれ。マンガ家。1983年に『八月の濡れたパンツ』でデビュー。先鋭的なギャグ作品で注目される。代表作に『コージ苑』『かってにシロクマ』『真・異種格闘大戦』など。最新単行本は『こびとねこ』(双葉社刊)。


竹熊健太郎(たけくま・けんたろう)/マンガ編集者
1960年、東京生まれ。編集家・フリーライター。電脳マヴォ編集長。多摩美術大学非常勤講師。1980年からフリーランスに。1989年小学館ビッグコミックスピリッツで相原コージと連載した『サルまん サルでも描けるまんが教室』が代表作になる。以後、マンガ原作・ライター業を経て、2016年 電脳マヴォ合同会社を立ち上げ、代表社員に。


江上英樹(えがみ・ひでき)/マンガ編集者
1958年、神奈川県生まれ。マンガ編集者。小学館入社後、『ビッグコミックスピリッツ』など青年誌の編集を担当。2000年に『ビッグコミックスピリッツ増刊IKKI』(2003年から『月刊IKKI』)を立ち上げ編集長に就任。同誌休刊後の2014年に小学館を退社。現在はウェブコミックを中心に展開する「ワイラボジャパン」代表取締役を務める。

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