東アジア文化都市2019豊島マンガ・アニメ部門スペシャル事業

マンガ・アニメ3.0

中国におけるマンガはどうなっているのか(後編)
――プロダクション方式、Webマンガ、メディアミックス黄亦然インタビュー

中国のマンガを知るために


――黄さんは中国マンガの課題はどこにあると思いますか?


 マンガ全体について言えば、ジャンルの幅の狭さが問題だと思います。メディアミックスが前提ということは、即時的に売れることが重要視されるため、作品の傾向が流行りもののジャンルに集中してしまうんですよ。
 さらに「マンガは幼児向け」という考え方がまだ存在しているため、子どもから大人まで楽しめるコンテンツであることをもっと周知する必要があります。その思い込みが薄れてくれたとき、中国マンガにも様々なジャンルの作品が生まれより豊かになると思います。


――一般に、中国ではまだ「動漫」が文化として認められていないという感覚なのでしょうか。


 そうですね、年長者の理解はまだまだ必要です。ただ、2003年に『千と千尋の神隠し』がアカデミー長編アニメ映画賞を受賞したときは、社会的な盛り上がりを感じました。宮崎駿監督は中国でも多くのファンを持つ作家ではありましたが、一般の人々の間では「アニメなんて子ども向けだろう」というイメージが今以上に強かった中、アジアのアニメがアカデミー賞に輝いたことは驚きが大きかったようで、アニメ=子ども向けという認識が少し変わったようには思います。


――また一方、日本で中国のマンガについて知りたいと思っても、残念ながらその機会は極めて限られているような状況です。そんな中、黄さんが関わられている「MANGAサミット」は、中国をはじめ、世界各国のマンガに触れられる貴重な機会になっていますね。


 ありがとうございます。「マンガサミット」は里中満智子先生が代表を務める国際イベントです。里中先生は大阪芸大でも教鞭を執られていて、それがきっかけで私も大学1年生の頃から運営に関わらせていただくことができました。アジア各国をはじめ、世界中の国と地域のマンガ家や関係者が集まって、各国のマンガについての状況報告をしたり、シンポジウムを行ったりと、様々な催しがあります。今年は11月30日と12月1日の2日間、福岡県の北九州市国際会議場・西日本総合展示場ガレリアにて開催されますので、中国のマンガに興味をお持ちの方も、この機会に是非足を運んでみてほしいですね。

 

聞き手:高瀬康司、山内康裕、構成:高瀬康司、高橋克則

 

黄亦然(こう・えきぜん)
1987年、中国黒龍江省ハルビン市生。大阪芸術大学キャラクター造形学科卒業。「一般社団法人マンガジャパン」「NPOアジアMANGA運営本部」「デジタルマンガ協会」事業統括部長。現在は、日本国内でマンガ家関連のイベント企画などを行いながら、中国をはじめアジア各国・地域のマンガ家との交流活動を進めている。

Related Posts