東アジア文化都市2019豊島マンガ・アニメ部門スペシャル事業

マンガ・アニメ3.0

電子化の波とともに変革期を迎えた
2010年代漫画産業(後編)菊池健インタビュー

荒削りだけれど得体の知れない熱量を求めて


――菊池さんが現在関わっているのが「マンガ新聞」についても教えてください。


菊池 「マンガ新聞」は2014年1月にホリエモンこと堀江貴文さんとコルクの佐渡島庸平さんが、書評サイト「HONZ」内に立ち上げた「マンガHONZ」が元になっています。私はそのスターティングメンバーとして、佐渡島さんに誘われてレビューを書くようになりました。「マンガ新聞」はネットによって情報があふれている中で、埋もれてしまった名作漫画を紹介したいというコンセプトから始まっています。紹介に当たっての決まりは、作品を批判しないということだけ。


――批判しない、というのはなぜですか?


菊池 批判自体がダメというわけではなく、新聞や文芸誌のような場所で、たしかな審査眼を持った人が「この本は読まなくていい」と示すことには意味があると思っています。でもネットの読者には、自分と趣味が合うかどうかを気にしている人が多いと思うんですね。特に世の中に大量の作品が出回り、情報の洪水が起きている現状では、一人ひとりのlikeやfavoriteこそが重要だろうと考えたわけです。


――「マンガ新聞」では書評が本業ではない方がレビューされている点も特徴的です。


菊池 プロライターさんの文章は、きちんと整理されていて読みやすく、当然価値のあるものです。ただ一方で、プロではない人に「あなたが面白いと思った作品について書いてください」とお願いをすると、荒削りだけれど得体の知れない熱量の文章が出てくることがある(笑)。だから依頼をするときも、あなたが本当に面白いと思う作品について書いてほしいということは伝えています。

 

『ビッグコミック』を読む小学生


――ちなみに、菊池さんご自身はどのような漫画を読んで育ってきたのでしょうか?


菊池 私の父親はかつて漫画家を目指していた時期があったそうで、家に大量の漫画誌が置いてあったんです。しかも『週刊少年ジャンプ』などの少年誌ではなくて、青年誌がメイン。だから私は小学生なのに『ビッグコミック』や『漫画アクション』や『リイドコミック』といった、サラリーマン向けの漫画を読んで育ちました(笑)。


――好きだった作品は?


菊池 岡崎二郎さんの『アフター0』や弘兼憲史さんの『人間交差点 -HUMAN SCRAMBLE-』は大好きですね。あと浦沢直樹さん。『パイナップルARMY』や『MASTERキートン』も『ビッグコミックオリジナル』の連載中からリアルタイムで楽しく読んでいました。


――それだけ早熟だと、ご自身も漫画家になりたいと思わなかったのでしょうか。


菊池 いえいえ(笑)。小学生の頃には漫画家になりたいなと思って絵を描くこともありましたが、すぐに才能がないと気付いて、それ以降はただの読者として漫画をひたすら読み続けていただけですね。実際、大学は理系に進み、卒業後は商社マンとして就職しましたから。

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