東アジア文化都市2019豊島マンガ・アニメ部門スペシャル事業

マンガ・アニメ3.0

電子化の波とともに変革期を迎えた
2010年代漫画産業(後編)菊池健インタビュー

IMARTをマンガ・アニメの国際的ルール作りの場へ


――最後に、カンファレンス スペシャル・アドバイザーを務められる「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima(IMART)」に対する意気込みや、菊池さんなりのモチベーションを教えてください。


菊池 先ほど言ったような経緯で、国際的に漫画が売れるようになることが、私の一つの目標としてあるんですね。それで以前に、世界のゲーム業界について勉強したことがあります。日本のゲームが世界を席巻していたのは2000年代前半まで、2010年代のPS3以降ぐらいからは海外のほうが圧倒的に力を持つようになってしまいました。それはなぜなのか調べたところ、ゲームデベロッパーズカンファレンス(GDC)がアメリカで開催されていることを知ったんです。
 GDCはファン向けではなく、世界中のゲーム業界に関わる人たちが集まるイベントです。30年前の開催初期は小規模な集まりに過ぎませんでしたが、今では1週間の開催期間中に世界中のゲーム関係者2万人がサンフランシスコに集まり、ゲームの制作、プログラミング、グラフィック、音楽など、200のセッションが行われるカンファレンスになっています。また全員が業界関係者なので、新技術の発表の場というだけでなく、リクルーティングも積極的に行われている。私がその場に参加してみたとき、直感的に思ったんですよ。ゲーム機のハードウェアはXboxだけはアメリカ製ですが、それ以外のほとんどは日本製であるにもかかわらず、彼らがゲームのイニシアティブを取っているのは、とにかくそこでルール(倫理規定、マーケティングの手法、販売・制作の方法論、教育、インディーズの発掘等々)のようなものを提案し、コンセンサスをとっていくからだと。『ゲームの達人』という作品がありますが、正にルールを作る側がゲームを支配するというのは、彼らが最も得意とする戦い方ですよね。そのためにゲームの覇権はアメリカにあると思うんです。


――なるほど。それは逆に言えば、日本はルール作りができなかった?


菊池 そうです。そしてそうであるからこそ、GDCの漫画版やアニメ版を日本で開催したいと常々思っていたんですよ。だからIMARTのお誘いを受けたときは、まさにそれにうってつけの場だと思いました。
 たとえば漫画であれば、日本の漫画、フランスのバンド・デシネ、アメリカのアメコミやイラストブックのすべてを含めた市場は、グローバルで6000億~1兆円だという統計があります。その中で日本の漫画産業は4500億円もある。つまり世界のほぼ半分が日本なんです。これだけのインパクトがあるのだから、ルールを作る側の立場にあると思うんですね。
 クリエイティブがこれだけ複雑化してしまった現在のエンタメ産業において、ワークショップやメイキング、そしてルール作りをする場は絶対に必要になります。そんな中でIMARTが、漫画やアニメをめぐる国際的なカンファレンスとして、世界中のクリエイターが学び、交流し、未来を切り開く場になれればいいなと思っています。

 

聞き手:山内康裕、高瀬康司、構成:高瀬康司、高橋克則

 

菊池健(きくち・たけし)
1973年生。マスケット合同会社代表、漫画レビューサイト「マンガ新聞」ディレクター、トキワ荘プロジェクトアドバイザー、NPO法人HON.jpアドバイザー。漫画家支援の「トキワ荘プロジェクト」に7年間従事し、新人漫画家に安価な住居を提供しつつ、『マンガで食えない人の壁』等書籍制作、イベントや勉強会等を開催、新人漫画家支援というジャンルを構築した。かたわら、京都国際マンガ・アニメフェアの立上事務局メンバーとなり『まど☆マギ』生八ッ橋などの商品開発なども行う。京まふマンガ出張編集部、京都国際漫画賞なども立ち上げた。現在は、「マンガ新聞」を運営。IMARTではカンファレンス スペシャル・アドバイザーを務める。

「東アジア文化都市2019豊島」マンガ・アニメ部門スペシャル事業「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima(IMART)」は、2019年11月15日(金)~11月17日(日)に、としまセンタースクエア(豊島区役所本庁舎1階)・豊島区役所本庁舎5階会議室にて開催されます。
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